悪魔の僕は天使の君に恋をする
ハルに連れられて入った病室には、一人の少年が座っていた。


「あ、お姉ちゃん!……と、黒崎ルナだ!」


そう言って目を輝かせる少年は黒髪に黒い瞳をしていて、全体的に色素の薄いハルとは似ても似つかなかった。


(本当に弟なのかな……?)


「紹介するよ。ボクの弟の白神涼介。サッカーが好きで、たまに一緒にボールを蹴ってるんだ」


「白神涼介です!よろしくね、黒崎ルナ!」


「ルナでいいよ。よろしくね、涼介君」


「うん!ルナ、サッカーのお話ししよ!」


「いいよ。昨日のJリーグの試合見た?」


「見た!最後のシュートカッコよかったよね!」


「分かる!あのシュートすごく難しいんだ。きっとたくさん練習したんだろうな……」


ルナと涼介はサッカーの話題で盛り上がった。


(涼介、嬉しそうだな)


ハルは弟の様子を見て、微笑む。

ハルは天使だった。人に幸福を与えるのが天使の仕事で、ハルはその修行のために涼介の病気を毎日少しずつ癒していた。

お陰で、今ではボールを蹴るだけのような軽い運動なら許可されるようになったのだ。


(完治までもう少し……)


ハルは2人の様子を慈愛に満ちた表情で見ていた。


(涼介、ボクが君を幸せにしてみせるからね)



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