さよなら、片想い
ベンチで男女が二人座って一つのイヤフォンを使っている、側から見たらきっと付き合っているんだと思われるだろう。

でも、俺はナタリーに「好き」という自分の気持ちを伝えることはできないし、すぐ近くにある白くて小さな手を握ることもできない。

だって、この歌の歌詞を見てナタリーが重ねているのは俺じゃない。俺の親友の武藤渉(むとうわたる)なんだから……。



ナタリーと出会ったのは、高校に入ってすぐのこと。同じ科学部に入部したのがきっかけだった。

窓の外を見つめる横顔さえ綺麗で、中学からの親友である渉とドキドキしながら声をかけたのを覚えている。緊張して声が上ずっていたけど、ナタリーはニコリと笑って俺たちと話してくれた。

ナタリーのことを知れば知るほど、俺はナタリーのことを好きになっていった。ナタリーとはクラスが違うぶん、部活で一緒に実験したり距離を少しでも縮めようとした。俺が好意を抱いているって知ってほしかったから、アプローチをしたつもりだった。でも、人の気持ちは都合よく動かない。
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