さよなら、片想い
こんな自分が「好きだ」なんて言ったら相手に失礼、そう二人は言い続けて高校三年生と夏になってしまった。これから進路のことで忙しくなるのに、恋で悩んでいていいのかと思ってしまう。

ふと、黒い感情が顔を出した。渉にはナタリーの好きな人は渉じゃないと伝え、ナタリーにも渉の好きな人は別にいると伝える。こうして二人の恋を無理やり終わらせて、傷付いたナタリーに俺が告白する。そうすれば、ナタリーは俺に振り向いてくれるんじゃないかなって……。

でも、その黒い感情をいつも邪魔するのが、自信を持てずに寂しげな顔をするあの二人。その表情を思い出すだけで、胸が締め付けられる。そう、まるでナタリーが渉を好きだと言ったあの時みたいに。

「クソッ!」

何故かムカついて、モヤモヤして、放課後の教室で頭を掻きむしる。二人が恋に真剣に悩んでいる間、俺も傷付いた悩んでいたよ……。今だって悩んで、泣きそうになる。

もう夜が迫ってきていた。グラウンドで走り回っていた運動部たちが片付けを始めている。そろそろ俺も帰らないと……。
< 5 / 9 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop