私、お金持ちになっちゃいました!?



何で?って馬鹿なの!?
私ずっと避けてたんだよ!?
気まずくないの!?


とは言えずに唇を
ぐっと噛み締める



「綺羅…離して…」



「嫌だ」


「何で?何なの!?」



思い切り抱きしめられていて
私には綺羅の顔が見えない


どんな表情をしているかもわからない
どんな気持ちでこんな事をしているのかも
私には全然理解できない。



「辛いんだよ…苦しい」



そう言って更に強く
私を抱きしめる



は…何を勝手な…。
辛い思いしてんのは
あんただけじゃないっての!



けどそれらが口から
出ることはなく…



唇を噛み締めたまま
ただ涙が溢れた



そんな私の心情など
お構い無しに綺羅は
言葉を続ける



「お前が家に帰ってこなくなって、目も合わせてくれなくて、避けられて、抱きしめることもキスすることも出来なくなって…そこでやっと分かったんだよ…。



子供のまま成長できてねえなって。あの日止まった歯車を動かすのが怖くて怯えて、また失ったらって…自分の気持ちを押さえつけて…



でも避けられたら悲しい…お前がいない家に俺の居場所なんてないんだよ!!」




こんなに大きな体なのに
その体は震えていて


声は凄く大人びてるのに
話し方はまるで子供…。



「そう思ってるなら…なんで…栞さんとキスなんかしたの?」




気づいたら口をついて出ていた。
でも、後悔なんてしてない



だって聞かなきゃ始まらない。
綺羅が今、変わろうとしてくれてるなら
私もちゃんと変わらなきゃ!!



「あ…あれは!」



明らかに動揺しているのがわかる
私を抱きしめる腕が少し緩んだーーー。
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