トシノサ恋 〜永久に…君に〜 番外編
①畑野 日向子編
「もう、7時…」

ふと、腕時計を見るといつもより1時間遅くなっていたことに気がついた…。

保護者対応で時間外労働…教師なんてそんな事ばかりだ…毎日何かに追われている。

32歳…この年で彼氏なし、もちろん結婚予定なし。

結婚適齢期…いつからかそんな事、全然気にもとめなくなっている自分がいた。

はぁ…疲れたぁ…。

今日も一日よく働いたなぁ…。

今から、何か作って食べるなんて絶対…無理。

最寄りのコンビニで何か買って帰ろう…。

ピンポーン

お馴染みの店内に入る…

今日は何にしようかな…お惣菜コーナを見ながら考えていると…。

「…あの、すみません…」

急に背後から男性に話しかけられた。

え?何…もしかして邪魔ってことかな?

「あ…すみません…すぐ退きますので…」

そう言って足早に立ち去ろうとした瞬間…

「あっ、違うんです…そうじゃなくて…あの…畑野さんですよね?」

…え…何で私の名前…知ってるの?

その瞬間…私は声のした方を振り返った…
そして…その男性を見上げマジマジと見つめた。

そこには、パッと見ただけで細身のイケメンだとわかるくらいに明らかに綺麗な顔をした男性が立っていた。

え…芸能人…??何かの撮影?

でも、カメラとかないし…隠しカメラとか?

私の挙動不審な様子をみてそのイケメンは、私の顔を少し心配そうに眺めていた。

「あ、あの…大丈夫ですか?」

「え…はい…」

「覚えていますか…俺の事…」

こんなにイケメンの知り合いなんて澤山先輩くらいしかいないからな…。

「……えっと…」

「新井 光です…奥平紗和さんの元生徒の…」

………っっ!?

紗和の…あの生徒…!!

思い出したっっっ!あのやけにイケメンの生徒だっ!

「あっ!紗和を追いかけ回してた…っっ?」

…やば…っっなんちゅー言い方を…

そう思って顔を見上げた瞬間…

「プッ…アハハ…そうです。
紗和を追いかけ回してたあのガキです。」

…ドキン…

不整脈…

こんなに間近にイケメンの笑顔…

それもすごく可愛い笑顔で。

そういうのは好きな女性だけにしなさいよ。

それにしても…なんて破壊力がある笑顔…

ほんとにイケメンの笑顔は心臓に悪い…。

はぁ…落ち着いて…

という事は今22歳?

10歳も年下にトキメイている場合ではないぞ。

冷静に…

紗和の元彼なんだよね?

というか、紗和とはもう終わったんだよね?

今更…何の用?

紗和に、言ったほうがいいのかな?

「…どうして?ここにいるの?」

そう思って、彼の顔を覗き込んだ。
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