トシノサ恋 〜永久に…君に〜 番外編
あの日、仕事が立て込んでいて休日出勤をしていた。外回りから戻る途中だった。駅前で、紗和を見かけた。声をかけようとした瞬間…

「…え、誰?」

彼女は、若い男と一緒にいた。見たことがない男…。
その男が紗和に好意をもっているとすぐにわかった。
何か理由があるんだと思った。
紗和が簡単に他の男と会うなんて考えられない。
だから…後で事情を聞こう…そう思って踵を返そうとした時…彼女の笑顔が見えた…。
「…………あんな顔…」
俺はもう長い間…見たことがなかった。

ズキン……………
胸が…痛い。

会社に戻った後も…ずっとあの笑顔が頭から離れなかった。俺の本能が…危険信号をだしていた。
彼女に会いに行こう…
会えば、誤解だって、わかるはずだった。


改札を通って

駅を出てから紗和の家までやっとの思いで歩いた。
彼女部屋の前で長いこと待っていた…。

うつ向いた彼女が歩いてくる。

「…紗和…?」

不安な気持ちが押し寄せてくる。
それでも冷静になろうと、静かに彼女の名前を呼んだ。

「……あ…」

うつ向いた顔を彼女かゆっくり顔を上げた。

「……勝平…どうして…?」

…ズキン…
彼女の目が腫れている…泣いていた?
俺の心臓がザワザワと騒ぎだす…。それでも知らないふりをして話した。

「仕事がずっと立て込んでて…

今日も休日出勤だったんだけどさぁ…

やっと、仕事が片付いたから…

紗和に会いたくて…。」

「…うん、そっか…。」

彼女は、俺の顔をまともに見ず、ドアの鍵を開けようとした。何で…見てくれない?不安で苛立ちが抑えられなくなりそうだった。

「…一応…17時くらいにLINEしんだけど?」

「…え、あ、ごめん……ちょうど出先で

気がつかなかった…

今日、日向子と会ってたから……。」

「……え、畑野さん?」

「…うん…。」

そう言って彼女は、ドアを開けた。

まさか…嘘だろ?

俺は何も聞いてないのに…彼女は自ら嘘をついた……。
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