あわよくば、このまま
「板書お願いしてもいいか?」
教卓に着くと、小声で藤に尋ねられる。
それに頷くとさっきまで嫌そうにしていたのが嘘みたいに、はきはきと話し始めた。
「じゃあ今から種目について説明するので」
……こういうところが凄いんだよなぁ。
切り替えが早いというか、これだけで藤がいいやつだということがわかる。
種目名をひとつひとつ黒板に書きながら、後ろで藤が説明しているのに耳を傾ける。
「この種目は全員参加なので───」
低い声はすっと耳に馴染むし、説明だって丁寧でわかりやすい。
……こういうところもモテる要素の1つなんだろうなぁ。
っていやいや!!違うでしょ!!
ボキッ!
思わず指に力が入り、チョークが折れてしまった。