あわよくば、このまま
「え〜、今年も二人三脚とか?」
笑ってそう言えば、里帆もぷっと吹き出す。
「そしてまたこけるの?」
「あはは! 去年のアレね」
2人で1年生の頃の体育祭を思い出して、思わず笑いがこみ上げてくる。
そう、去年私たち2人で二人三脚に出て、盛大にすっ転んだのだ。
走る前までは私たち1位いけるんじゃ!?とかはしゃいでいたにも関わらず、その意気込みが空回ったせいか足並みが揃わずスタート直後に転んでしまった。
擦りむいた膝がヒリヒリするのもお構いなしに、2人で笑いながらゴールしたのはいい思い出だ。
「なになに、2人とも二人三脚でるの?」
横からにゅっと会話に入ってきたのは寺田祐介(てらだゆうすけ)くん。
「寺田には関係ないでしょ」
「鈴永さんひで〜」
けらけらと笑う彼は、クラスのムードメーカー的存在だ。
「な、俺らも出るか? 怜也」
「祐介と二人三脚はちょっとな……」
寺田くんと藤は1年生の時に同じクラスだったみたいで、よく一緒にいるのを見る。
事実、席の離れている寺田くんがこうやって藤の元に来るくらいだから、かなり仲がいいみたい。