あわよくば、このまま

「伊織! 聞いてる?」

「へっ?」


ふわふわと考えごとをしていたら、いつのまにか里帆に話しかけられていたことに気づかなかったみたい。


「ごめん! 聞いてなかった!」

「も〜、ずっと一人で話してたじゃん!」


ぷりぷりと怒る里帆にもう一度ごめんと謝れば、許す!となんとも男前な答え。


「それでどうしたの?」

「まき先輩がさ〜」


まき先輩というのは里帆の部活の先輩で、すごく優しい先輩。


「衣装係に人が欲しいんだって」


衣装係というのは、主に応援団の衣装関係に携わる仕事をする係のことなんだけど。


「まき先輩、衣装係なんだ」

「なんかリーダーらしい」


そういって里帆が見せてきたのは、スマホの画面。

立ち上がったメッセージアプリには、部活のグループと思われるトーク画面が映っている。

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