あわよくば、このまま

「でもよかった〜。やってみたいけど、1人はちょっと心細かったんだよね」

「なら初めから誘ってくれれば良かったのに」


里帆からの誘いなら断るわけないのに。


不思議に思ってると、だってさ〜と含み笑いしながらこっちを見る里帆。


「伊織、裁縫とかあまり上手じゃないじゃん」


うっ! この流れはもしかして……!


「ほら、1年のとき家庭科の授業でさ」

「も〜だからあれは偶々だって!」


"あれ"というのは、ミシンでエプロンを作った時のこと。


ミシンを使って縫い物なんてあまりしたことなかったから、使い方をよくわかってないままエプロンを縫っていたんだけどそれが良くなかったみたいで。


違うところまで縫っちゃうわ、針は折っちゃうわ、挙げ句の果てには折れた針が空中を舞う大惨事。


幸いにも誰も怪我することなく済んだのはいいけど、そのあと先生にはくどくどと説教されるし、正直あまり思い出したくもない出来事だ。


ただ、あの時の私のあまりの慌てように、里帆が心配しながらも笑っていたのはものすごーくよく覚えてるからね。

だってめちゃめちゃ恥ずかしかったし!

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