あわよくば、このまま

「もうミシンの使い方はマスターしたから!」

「あはは、本当〜?」

「本当だって!」


ぷうっと口を膨らませてそう言えば、ごめんごめんと笑いながら謝る里帆。


そうこうしてるうちにいつのまにか時間が経っていたみたいで、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。


「とりあえずまき先輩に連絡しとくね! あたしと伊織やりまーすって」

「了解〜」


がたがたと周りが席を立つ中、私も掃除に向かうべく教室を後にする。


ちなみに里帆は教室掃除なので、ここでお別れ。


私の掃除場所は昇降口。

階段を降りてすぐの場所。


廊下を歩いていると、藤とほうきを持った寺田くんが階段へと繋がる位置で話しているのが見えた。


「考えとくから、とりあえず掃除しろって」

「絶対だぞ!」


どうやら階段を降りようとする藤を寺田くんが引き止めてるみたい。

仲良いなぁと思いながらその後ろを通り過ぎようとした時。


「はいはい……うぉ!?」

「わわっ!?」


まさか藤が後ろを向いたままバックしてくるとは思わず、見事にぶつかってしまった。

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