あわよくば、このまま

「わり! 大丈夫か?」

「だ、大丈夫!」


正直少しびっくりしたけど。


「秋宮さんごめんね!?」


なぜか寺田くんまで謝ってくるのがおかしくて、ふふっと笑いが漏れる。


「本当に大丈夫だから気にしないで」

「なら良かった」


私の目を見てほっとしたような笑みを浮かべる藤。


なんだかその目をずっと見ていられなくて、じゃあまた、と逃げるように階段を降りていく。


「じゃ、俺もそろそろ行くわ」

「ちゃんと考えろよー?」


後ろで藤と寺田くんの声が聞こえる。

一体なんの話なんだろ。


「まじでごめんな」


追いついてきた藤が、心配するように顔を覗き込んでくる。


「大丈夫だって。も〜心配性なんだから」


こういうところは中学の頃から変わってないな〜。


誰に対しても優しくて、いつでも相手を気遣う。

その優しさに前は素直に感心するだけだったけど、今はそれに加えて、なんだか少しだけ胸の奥がむずっとするような……。

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