あわよくば、このまま
「はい、お二人さんもどうぞ」
「ありがとうございます〜」
あれ?
私たちが最後のはずなのに、まだ一つ残ってる。
一瞬だけ考えて、すぐにまき先輩の分だと気がついた。
「まき先輩、今日遅いですね」
いつも先に来てるはずのまき先輩。
なのに今日はなぜかまだ姿を見ていなかった。
「まき、今日は遅くなるんだって」
「そうなんですか?」
「うん。なんかリーダーの集まりがあるって言ってたよ」
「へぇ〜、リーダーって大変なんですねぇ」
千咲先輩の言葉に、まき先輩のすごさを改めて感じる。
「え、まき遅くなるの?」
すると横からひょこっと慎二先輩が意外そうな声で割って入ってきた。
でもそれも一瞬で、次の瞬間には何か企んだような笑みを浮かべ始めて。
「あ、でも遅くなるって言っても多分……」
「ならアイス溶けちゃうし、これは仕方ないよな!」
千咲先輩の声を遮って嬉々としてそう言った慎二先輩は、目にも止まらぬ速さでアイスの袋を開け始めた。
「あ! 有野くん!」
千咲先輩が慌てて止めに入ろうとしたときには時すでに遅し。
ぱくっ!
綺麗な空色をしたソーダ味のアイスは、慎二先輩の口の中に入ってしまった後だった。