あわよくば、このまま
「? どうしたの? 飯村さん」
しゃくしゃくとアイスを食べながら、笑顔でそう聞いてきた慎二先輩に、私と千咲先輩は目を見開いたまま固まってしまった。
それもそのはず。
だってこちらに向かってくるまき先輩の姿が見えていたのだから。
廊下に背を向けている慎二先輩は、全く気づいていなかったみたいで。
「ごめーん! 遅くなった!」
そう言って教室に入ってきたまき先輩の声に、面白いくらいにびくっと体を震わせていた。
「あれ? みんなアイス食べてる〜」
荷物を机に置きながら、すぐにアイスに反応するまき先輩。
まぁ、教室にいるみんなが食べてるから当たり前だよね……。
なんだか慎二先輩の背中が少しだけ小さくなったような気がする。
「ブロック長に貰いました〜!」
「優しいんで全員分あるみたいですよ〜」
「まきも貰ってきな〜」
あちこちから上がる感謝の声に、どんどん小さくなっていく(ような気がする)慎二先輩。
ちらっと助けを求めるようにこっちを見るけど、私と千咲先輩はもうどうすることもできないから困ったように笑うしかなかった。
そしてついに。
「わ〜慎二やるじゃん! ありがと!」
満面の笑みでやってきたまき先輩に、観念したようにがっくりと肩を落としたのだ。