あわよくば、このまま
「あれ? 私の分は?」
袋を覗き込んだまき先輩が不思議そうに尋ねる。
もちろん慎二先輩が食べたからそこには何も入っておらず空っぽで。
「あ、いや」
食べかけのアイスを片手に視線を彷徨わせる慎二先輩。
ちらちらとアイスを見る目から、食べなければよかったという後悔と、こんなことなら全部食べてしまえばよかったという後悔がせめぎ合っているのが透けて見える。
もちろん私にわかるということは、まき先輩はきっとそれ以上にわかってるはずで。
「みんなの分あるって聞いたけど?」
笑顔の圧がすごい。
美人が怒ると恐いって本当なんだな……。
「いや、その」
「……慎二?」
「…………すまん!!」
とうとう圧に耐えきれなくなった慎二先輩。
がばっと下げた頭と、捧げるように差し出されたアイスがなんともアンバランスだった。