あわよくば、このまま

紙に数字を書き込みながら採寸を進めていると、「はい、これで終わり」と言う声が隣から聞こえてきた。


それに喜びの声を上げた寺田くんが背伸びをしているのを見て、肩まで捲り上げられた袖から覗く腕がつい目に入った。


寺田くんいわく変わったらしいけれど、元々を知らないせいでやっぱり変化はわからない。


でもあの寺田くんが筋肉ついたって言うくらいだから、やっぱり練習とかきついんだろうな。


教室に溢れかえる応援団の人たちも、心なしかがっちりとした人が多いような気がするし。


それに意外と───


「みんなお疲れ〜……って何遊んでるの!」
「ひょえっ」


突然のまき先輩の突き刺すような声に、肺から出た空気が変な音を立てて喉を通り抜けた。


「やべっ」
「いや、これは……!」

「もー! まとめ上げる立場の2人がこんなんじゃダメでしょ」


慎二先輩と団長さんがお互いを肘で突きながら慌てて言い繕うのを、まき先輩がぴしゃりと切り捨てる。


私に向けられた言葉じゃないとわかっていても、驚いたせいで心臓がバクバクと音を立てて鳴り止まない。

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