意地悪な副社長との素直な恋の始め方

朔哉は、それまでの「副社長」の顔を一変させ、不機嫌極まりない表情でぼそっと命令する。


「さっさとそのドレスを脱げ」

「え……?」


わけがわからず、あっけに取られている間に、朔哉は立ち去った。


(い、いったい、何なの……)

「ぜんぜん気づいてもらえないなんて、同情するわ」

「そうだねぇ」

「ええ、まったく……」


シゲオがしみじみと呟き、コウちゃんと八木山さんはしきりに頷いて、同意を示す。
三人が何を思ってそんな素振りを見せるのか、さっぱりわからない。


「取り敢えず、さっさと着替えましょ。偲月。その、とんでもなく高価なドレスに何かあったら大変だもの」

「あー、疲れた! ところで」


みんなでオーベルジュへと戻りながら、窮屈な恰好はうんざりだと上着を脱いだ流星が、その場を締めくくった。


「澤村課長。打ち上げ、行きますよね? もちろん、課長の奢りで!」

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