意地悪な副社長との素直な恋の始め方
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オーベルジュをあとにし、都心へ戻ったその足で向かったのは、創作和食の居酒屋。
リーズナブルながらもフォトジェニックな料理は味も素晴らしく、緊張感から解放された反動もあり、ついつい食べまくってしまった。
お酒も進み、かなりいい気分になって帰宅したのは、午後十時。
夜遊びというほどの時間でもないし、まだ朔哉は帰っていないだろうし、と言い訳しつつ開けた玄関ドア。
その向こうには、なぜかワイシャツ姿の部屋の主が待ち構えていた。
「た、だい……ま」
「遅い」
「打ち上げに行くって、メールした…っ…んだけど」
打ち上げは仕事のうち。一応、メールはしたから、無断で出かけていたわけではないと言い訳してみるが、不十分だと叱られる。
「帰宅予定時刻が書かれていなかった。あれでは、いつ帰って来るのかわからない。そもそも、帰って来る気があるのかも、わからない」
「が、外泊なんかするわけないでしょ! 今日は朔哉が帰って来ると思ってたし、明日は朔哉とゆっくりできると思ってたし……ん? うぅ」
靴を脱ぎ終わるより先に、キスされた。
柔らかく、熱い唇を押し当てられるとほろ酔い加減の頭も身体もあっけなく溶けていく。
抱え上げられて、リビングのソファーに辿り着くまでの間のどこかでワイドパンツは床に落ち、シャツも同様。下着とキャミソールという何とも心もとない恰好を明るい照明の下にさらけ出すのは、ちょっと恥ずかしい。