意地悪な副社長との素直な恋の始め方
断るなんて出来るはずもなく、頷こうとしたら、朔哉が大女優のお誘いを却下した。
「ダメだ。偲月と二人きりにはさせない」
「嫁いびりなんかしないわよ?」
「余計な入れ知恵をしかねない」
「夫を魅了する方法を教えるだけよ」
「そんなものは、必要ない」
「釣った魚に餌をやらない男性は多いわ」
「責任を持って面倒を見る覚悟もないのに、釣ったりしない!」
険しい表情で言い返した朔哉を見て、月子さんはにんまり笑い、母に問いかける。
「合格でいいかしら? 紗月さん」
「ええ。偲月が高校生の頃から見てきた朔哉くんなら、気が強そうなのは見掛け倒しで、すぐ逃げ腰になることもわかっているでしょうし」
「朔哉が大学生の頃から見て来た偲月さんなら、クールなフリして独占欲が強くて、甘えたなところもわかっているわね」
「厳しい二人の審査をクリアできたようで、何よりだな? 朔哉」
「……うるさい」
朔哉が、笑いながら慰める夕城社長を睨むと、月子さんと母も声を上げて笑った。
それからは、和やかに会話が弾んだ。
わたしと朔哉が一緒に暮らすようになった経緯。
先日『Nova Luna』に写真展を見に行ったこと。
そこで、コウちゃんと再会したこと。
カメラが趣味だということ。
聞き上手な月子さんによって、洗いざらい白状することに。
芽依が夕食の準備が整ったと呼びに来た時には、初対面だった月子さんともすっかり打ち解けていた。