意地悪な副社長との素直な恋の始め方
痛みに苦しみ、助けを求めて架けた夫の電話に、別人が出ただけでも十分ショックだ。
それが、自分に嘘を吐いて、元恋人とその娘と三人で旅行に行っていたなんて聞いたら……。
その事実を知った時の月子さんの心情を思うと、胸が痛くて、息が詰まる。
「情けないことに、わたしはショックと痛みでそのまま気を失ってしまってね。翌朝やって来た家政婦さんが、リビングに倒れていたわたしを発見して救急車を呼んでくれた。幸い、命に別状はなかったけれど、右足首を骨折していたわ」
「そ、れで……夕城社長は……」
「わたしが、仕事中の彼には知らせなくていいと関係者に口止めしたので、夜になって病院へやって来たわ。謝罪したいという彼女を連れてね」
溜め息と共に首を振る月子さんは、自嘲するように乾いた笑い声を上げた。
「夕城が、わたしから電話があったことに気づかなかったのなら、許そうと思っていた。でもね、芽依さんは、偶然彼の電話出てしまったけれど、ちゃんと誰かから電話が架かってきたと伝えていたの。それなのに、夕城は架け直さなかったのよ。わたしに何かあったのか。わたしに何かあったとしたら朔哉はどうしているのか、心配しなかった。彼にとって、優先すべき『家族』はわたしと朔哉ではなくなっていた。だから、離婚を決めたの」
「…………」