意地悪な副社長との素直な恋の始め方
きっと、これを、ずっと望んでいた。


「偲月……」


ごめん、だとか。
どうかしていたんだ、とか。
そんな言葉は聞きたくなかった。

だから、歪めた唇から愚かな言葉を吐き出した。


「ねぇ……芽依の代わりに、なってあげようか?」

「――っ!」

「わたしなら……同じ『妹』でも、血は繋がってない。禁忌じゃ、ない」


屈辱、怒り、憎しみ、苛立ち――あらゆる負の感情が黒い瞳の中で荒れ狂い、やがて何も見えなくなった。


「……おまえが、芽依の代わりになれるわけないだろ」


朔哉は、そう呟くと再びキスをした。

わたしの唇だけでなく、ありとあらゆる場所に――。



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