意地悪な副社長との素直な恋の始め方
迷いと決断
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「おはよー、偲月ちゃん」

「お、おはよう……ごめんなさい、コウちゃん。こんな早くから……」

「んー、気にしないで。もうそろそろ起きないと、ヤギちゃんに怒られるところだったから」

「そう! 惰眠を貪り過ぎよ!」

「ほらね?」


朝の九時前という、非常識な時間に訪ねたわたしを迎えてくれたコウちゃんは、Tシャツにスウェット、寝癖全開の思いきり寝起き状態だった。

それでも、イヤな顔一つせず、「朝ごはん、一緒に食べよ?」と言ってくれる。
八木山さんも、「こういうこと、よくあるのよー」なんて言って、山盛りのごはんを出してくれる。

食欲はまるでなく、食べられないかもしれないと思ったけれど、コウちゃんと八木山さんの夫婦漫才のような遣り取りに、強張っていたものが緩む。
気が付けば、白米、漬物、納豆、味噌汁という質素で美味しい日本の朝食を完食していた。

妊婦に何もかもさせられないと、後片付けを手伝おうとしたけれど、「適度に身体を動かす必要があるのよー」と断られ、結局食後のお茶までいただいて、リビングのソファーへ移動する。

コウちゃんは、「顔を洗ってくるね!」と言って走り去り、五分後。顔は洗ったらしいが、寝癖はそのままの状態でキャリーケースを抱えて戻って来た。


「これ、お返ししようと思ってたんだ。一枚を除いて、全部貰ったけどね」


ニカッと笑い、キャリーケースの中から取り出したクリアファイルに挟まっていたのは、あの写真。朔哉を撮ったものだ。


「いい写真だよねぇ。なんて言うか、愛が見えるっていうか。あの撮影の時も、すっごくいい表情してて、思わず撮りたくなったんだよねー」

「こ、コウちゃん!」

「大丈夫。ヤギちゃんには見せてないから。でも、あの撮影で副社長が偲月ちゃんの恋人だって、バレバレだったけど」

「…………」


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