意地悪な副社長との素直な恋の始め方
初恋を忘れたくなることもある
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(もう十日も過ぎてるんだけど。どこにいるのよ? 永遠に帰って来ないつもり?)
初めて兄妹の一線を越えた日から十日。
朔哉は、ずっと外泊し続けていた。
芽依にはこまめに連絡し、継父にもそれらしい言い訳をしているようだけれど、どう考えても帰って来ないのは、わたしのせいだとしか思えなかった。
あの日、朔哉から解放され、自分の部屋へ戻ったのは、真夜中だった。
黙っていれば、何があったかなんて、誰にもわからない。
そうは思ったけれど、朔哉と顔を合わせるのが気まずく、恥ずかしく、翌朝はバイトが早朝シフトだと嘘を吐いて、朝食も取らずに家を出た。
駅前のネットカフェで仮眠を取り、昼からはバイト。バイトが終わり、遊び仲間たちとカラオケに直行。
日付が変わる直前にドキドキしながら帰宅したのだが、朔哉はいなかった。
それからずっと、顔を見ていない。
何とか話したいと思っても、彼の連絡先を知らないし、大学で待ち伏せするのも嫌がられそうだ。
動くに動けず、誰にも相談できず、もどかしさと焦燥感でイライラしてしまう。
騒いでいれば、少しは気が紛れるかもしれないと、今日も学校帰りに友人たちとカラオケにやって来たが、いつもならバカ笑いしてしまうものまね合戦を見ても、一向に気分が晴れない。
その上、いつもなら三枚は食べられるピザ、マルゲリータも半分しか喉を通らない。
「十回目」