意地悪な副社長との素直な恋の始め方
「今度は……カメラを持参します。今日、撮影が終わった瞬間の月子さんを撮りたいと、思ったので」
「ぜひ撮ってちょうだい!」
わたしの口から、望んでいた答えを引き出した大女優は、喜びに顔を輝かせたが、すぐに眉根を寄せた。
「あ、でも……朔哉には、もう話したの?」
「え……あ、い、いえ、話す機会がまだ、なくて。あの、でも、これから話します。仕事のこととか、そのほかのこととか、黙って進めるわけにはいかないので」
「じゃあ、わたしから話すわ。正式に、オファーするとなれば、夕城にもひと言断らなくてはいけないし。いわば引き抜きのようなものなんだから、さすがに黙っているわけにはいかないわ。朔哉は、部屋にいるのよね? ちょうどいいわ。マネージャー、ちょっと待っててくれる?」
「え、あの、でも、まだ帰って来ていないか、も……」
どんどん話を進める月子さんに慌て、つい言葉を選び忘れてしまったと気づいた時には、遅かった。
「帰って来ていない? まさか、昨日からじゃないわよね?」
いっそう強く眉根を寄せた月子さんは、心配しているというより……怒っているようだ。
「えっ!? あ、いえ、あの、あ、朝から出かけて……」
「どこへ?」
「ど、どこ……し、仕事……に?」
「じゃあ、会社へ行きましょう」
「え。いえ、し、仕事じゃなかったかも? 買い物だった、かも」
「あの子は、買い物に時間を費やすのを無駄だと思っているから、ほとんどインターネットで済ませているわ」
「ど、ドライブか、も……」
「そもそも、あの子は偲月さんに予定を伝えずに出かけないと思うのだけれど?」
「…………」
「偲月さん?」