意地悪な副社長との素直な恋の始め方
追及の手を緩めない月子さんは、まるで犯人を追い詰める捜査一課の刑事のようだ。
そう言えば、月子さんがただ美しいだけではない、演技派女優として知られるようになったのは、とあるドラマで女刑事役を演じたのがきっかけだと聞いたような……。
「行くわよ」
有無を言わせず、わたしを車から引きずり降ろした月子さんは、マンションのエントランスへ突入。
わたしの手を掴んで指紋認証を潜り抜け、エレベーターに乗り込んだ。
「あの、でも、先に連絡を……」
「連絡、つくの? わたし、偲月さんのスマホに何度か架けたのだけれど、繋がらなかったわ」
「え」
鞄からスマホを取り出せば、ひび割れた画面が真っ暗になっていて、電源が入らない。
これでは、朔哉から連絡があってもわからない。
(サイアク……)
「玄関、開けて」
「はい……」
命じられるままに玄関を開けた瞬間、予想通りの怒声が聞こえた。
「偲月っ! どこへ行ってたんだ!? 何度も連絡したのに繋がらないし……母さん?」
怒る朔哉から逃れたくてさまよわせた視線が、彼の背後から現れたひとに釘付けになる。
(芽依……が、どうしているの?)