意地悪な副社長との素直な恋の始め方
「偲月。連絡が遅くなったのは悪かった。だが、家族の具合が悪ければ、看病するのは当たり前だろう? それに、芽依は俺の仕事のサポートもしている。一緒に行動するのは当然だし、芽依に私的なことを頼む場合も出て来るだろう。これから、芽依は偲月にとっても家族になるんだ。もう少し、柔軟な態度で接することはできないのか?」
わたしがにっこり笑って、わかったと言えば話は終わる。
もしくは、朔哉のことが好きすぎて、妹にさえ嫉妬してしまうのだと本音をぶちまければ、呆れられ、宥められ、言いくるめられて、終わる。
でも、どちらもできそうになかった。
笑うことも、芽依のように巧みに相手から言葉を奪うことも、できそうになかった。
「……無理」