意地悪な副社長との素直な恋の始め方


「急なお願いでごめんなさいね? ハジメくん」

「いえ、どうせついでなんで」

「おはよう、月ちゃん! きょうも美人だね?」

「おはよう、月ちゃん! きょうもかわいいね? ねえ、そっちのおねえちゃんは、だれちゃんなの?」


双子の女の子は、流星を挟んで左右から元気よく挨拶をする。
声もそっくりだ。


「おはよう、ミミちゃん、ナナちゃん。こちらのお姉ちゃんは、シヅキちゃんよ。しばらく、うちに住むことになったの。よろしくね?」

「おはよう、シヅキちゃん。シヅキちゃんもかわいいね!」

「おはよう、シヅキちゃん。シヅキちゃんも美人だけど、ハジメくんのおよめさんになるのは、ミミだからね!」


いきなりの牽制球に、仰け反った。


(い、いまどきの子って……)

「あーっ! ミミ! ハジメくんのおよめさんになるのは、ナナも! ぬけがけはダメだって、ママが言ってたでしょ!」

「恋は早いもの勝ち、言ったもの勝ちだもん!」


ぎゃあぎゃあと言い合い、取っ組み合いを始めた二人に挟まれた流星は、うんざりしたように一度天を仰ぎ、次いで彼女たちを左右の小脇に抱えた。


「わかったわかった。二人とも貰ってやるから、喧嘩すんな」

「ほんとう!?」

「約束だよ!?」

「ただし、イイ女になったら、だ」

「「イイ女って、なに?」」

「月ちゃんみたいな女のことだ」


流星の答えを聞いた双子は、目を見開いて月子さんをマジマジと観察したのち、冷静な判断を下した。


「「無理」」

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