意地悪な副社長との素直な恋の始め方
「なに、こいつらに同意してんだよ!」
流星に抗議され、しどろもどろになりながら、判断基準を口にする。
「いや、だって、その、朔哉と比較するとイケメンと言い切るのはちょっと……」
「朔哉を基準に判断すんな! アレは規格外だろ。痴話喧嘩で家出中のくせに、なにノロケてんだよ」
「痴話……喧嘩……じゃないし」
喧嘩ではなく、朔哉の気持ちを無視し、一方的に別れを選択したようなものだ。
帰るつもりはあるけれど、いつ、帰る勇気が持てるかわからない。
そうこうしているうちに、朔哉の気持ちが変わり、帰る場所がなくなることも……あり得る。
そう思ったら、うっかり涙が出そうになり、慌てて目を瞬く。
「朝から辛気臭い顔してんじゃねぇよ。さっさと行くぞ。こいつらの歩幅に合わせて歩くから、倍は時間がかかるんだ」
「シヅキちゃんも手、繋ぎたい? ハジメくんの手はミミとナナのものだから、ナナが繋いであげるね!」
するりと滑り込んで来た小さな手は、びっくりするほど温かくて、柔らかかった。
「行こうよ?」
「ちこくしちゃう!」
「ちこくすると、ハジメくんが園長先生に怒られるんだよ!」
「それで、れんらく帳に書かれて、ママにも怒られるんだよ!」
「「そんなのハジメくんがかわいそうでしょ?」」
真面目な顔をした双子に諭されて、つい笑ってしまいそうになる。
月子さんは、なぜ流星にお迎えを頼んだのか。その理由が、何となくわかった気がした。
「そうだね。ハジメくんが怒られないように、急ごう」