意地悪な副社長との素直な恋の始め方
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興味があるものを見つけると、いきなり走り出そうとしたり、突然しゃがみこんだり。予測不能な行動をする双子を何とか無事保育園に送り届け、ミッションは無事終了。
双子のパワーには圧倒されたが、元気のおすそわけを貰い、駅へ向かう足取りは軽かった。
しばらくぶりの満員電車も、思ったより苦痛ではない。
それは、気持ちの問題というより、目の前にいる流星のおかげでもあるけれど。
(何だかんだ言って……流星さんって、面倒見がよくて、優しい……よね)
口は悪いし、女癖も悪いらしいが、基本的に行動が優しい。
おませな双子たちには少々辟易しているようではあるけれど、嫌がらずに手を繋ぎ、とりとめのないおしゃべりにもちゃんと付き合っていた。
いまも、いわゆる壁ドンというヤツで、わたしが押しつぶされないよう空間を確保してくれている。
「んだよ? 何か言いたいことあんのか?」
「意外だな、と思って」
「何が?」
「パパぶりが板に付いて……」
「パパじゃねぇよ!」
「いや、でも、どう見てもパパ……」
「俺の子どもだったら、あんなに口が達者じゃない」
(もっと口が達者で毒舌に育つと思うけど)
「何だよ?」
「ううん? 何でもない。二人とも、流星さんのことが大好きなんだなって思って」
「生まれた時からずっと一緒にいるし、兄弟だから顔も兄貴に似てるしな」
「でも、お兄さんの方がイケメンだったんでしょう?」
「ああ。浮気相手を乗せた車で事故を起こして、何の責任も取らずに勝手に死んだクズだけどな」
「え……」