意地悪な副社長との素直な恋の始め方
「それに、このシチュエーションで、イケメンの俺にときめかないなんて、どう考えてもアイツ以外の男に興味ないって証拠だろ?」
黙り込んだわたしが、泣きそうだと察したのだろう。
そんな軽口を叩く流星は、やっぱり優しいと思う。
「シチュエーションって……ただの満員電車だし。イケメンじゃないし。そこそこだし」
「おい!」
「でも……いい人だとは、思う」
「……男を振る時の、最強最悪の台詞だな」
「うん」
「告白もしてねーのに、フラれるとかあり得ねぇだろ……。取り敢えず、今日、勤務終わったらメシ食いに行くぞ」
「お迎えは、いいんですか? イクメンなのに」
「だから、パパじゃねぇって言ってんだろ! 俺は、帰宅時間が読めないことが多いから、お迎えは母親の仕事なんだよ!」
「でも、どうして食事を一緒に……?」
「朝イチで連絡しておけば、夜までには事務所から返事が来る。今日の撮影スケジュールからいくと月子さんの帰りは遅くなるから、夕食は偲月ひとりで取ることになるだろ。あのひと、まったく料理しないから、家に食材はないぞ。うちに来てもいいが……双子が確実に邪魔をする。それに、入社式で奢ってやるって約束したしな」
「流星さんって…………いいひと」
「だから、それやめろ! 萎える!」
「セクハラ?」
流星は、苛立ちを溜息で紛らわし、忌々し気に呟く。
「偲月を見てると……ミミとナナの成長した姿の想像がつくぜ」
「どういう意味?」
「小生意気な小悪魔で…………」
一瞬で、流星の雰囲気が変わった。
「男を惹きつける女になりそうだってこと」