意地悪な副社長との素直な恋の始め方
「わかりやすい場所だから、迷うことはないと思う。迷っても、近くのコンビニとかで聞けば教えてくれるはずだ。ああ、そうか! 貧相なランチの理由が、いまわかった。今夜のために、あえてランチを少なくしてんだろう? 食い意地張ってんなぁ……」
「ちがうからっ!」
「知り合いがやってる店だから、メニュー制覇してもいいぜ? それと、今朝の話。電話したら、いい感触だった。詳細詰めて、また連絡くれるってよ。期待して待ってろ」
いろいろと言いたいことはあるが、仕事が早いのはありがたい。
「あ、ありがとう、ございます」
「いくら腑抜けてるからって、サヤちゃんに迷惑かけんなよ?」
「腑抜けてなんかないし! 迷惑だってかけてな……や、ええと、今日は、まだかけてないと思う」
これまで、サヤちゃんにいろいろお世話になっていることを振り返り、言い直すと流星が吹き出した。
「おま、ほんと面白いよな? サヤちゃん、コイツと仕事してて、笑い堪えるのがツラくない?」
「ツラいです。でも、そのおかげでかなり腹筋が鍛えられました!」
「サヤちゃんっ!?」
「ね、流星さん、合コンしませんか? 偲月ちゃんも含め、総務のキレカワどころ揃えるんで」
さらりと本音を暴露したサヤちゃんは、ショックを受けてるわたしをよそに、にっこり笑ってそんなことを言い出す。
「おー、いいねぇ。どんなタイプが好みか言ってくれれば、こっちも各課各部署からメンバー揃えるよ?」
流星は、打てば響く素早い反応で話に乗って来る。
「本当ですかっ!? ぜひ、お願いします! メンバー決まったら、即連絡します。いま連絡先を交換させてもらってもいいですか?」
「どうぞどうぞ。カワイイ子からの連絡は、二十四時間受け付けてるから」
「あはは、その言葉信じて、夜中に電話しちゃいますよ?」
「大歓迎」
スマホを取り出した二人は、素早く友だち追加だのアカウントの交換だのを行い始める。
(か、軽い……そして、いつの間に合コン成立? サヤちゃん! なぜわたしを含める!)
「マジ、連絡待ってるからさ。ところで、偲月」
唖然とするわたしを見下ろした流星が、くすりと笑って手を伸ばす。
「米粒ついてんぞ。子どもか」