意地悪な副社長との素直な恋の始め方
「畏まった店じゃないから、安心しろ」
流星が、無造作に扉を押し開けると、美味しそうな匂いと共に、同い年くらいだと思われる女性が出迎えてくれた。
「いらっしゃいませぇ~。あ、流星さん! カノジョさんいらしたんですね? よかったですねー、すっぽかされなくて」
「おう。カノジョじゃねーけどな」
「またまたぁ」
親しげな会話から、彼の知り合いがやっている店というだけではなく、常連だと知れる。
店内は、ほぼ満席。幅広い年代に人気のお店のようだ。
注文は、ドリンクも料理も流星のオススメに従うことにして、とにかく化粧室へ急ぐ。
シゲオレベルの修正は不可能だけれど、ファンデーションを塗り直し、疲れた顔を明るくするべくチークも重ね、アイラインも引き直した。
(これくらいなら、許容範囲……だよね?)
絶世の美女にはなれないけど、見苦しくはない程度にはなったことを確認し、席へ戻ると流星の横に立っていた黒いコックコート姿の男性が、にこやかに挨拶してくれた。
「こんばんは! ようこそいらっしゃいませ」
「……こんばんは?」
「偲月、コイツが店のオーナーで、俺の大学の同期。思远だ」
「わたしのことは、どうぞユアンと呼んでください」