意地悪な副社長との素直な恋の始め方
その夜から、わたしは朔哉の共犯者となった。
朝になる前に彼の部屋から自分の部屋へ戻り、再び夜になると彼の部屋を訪れる。
わたしは「蜜」を味わい、彼は「毒」を吐き出すために。
朔哉には捌け口が必要で、それになれるのは、彼の秘密を知っているわたしだけだった。
声を殺し、息を殺し――、闇の中で身体を重ねる背徳感と罪悪感。
芽依が決して知ることのない朔哉を知っている優越感に、溺れた。
そして、いつしか、
誰よりも――「家族」よりも、「芽依」よりも近くにいるのだから、自分は彼にとって、「特別な存在」だと、
そんなことを思うようになっていた。
無邪気にも。
――愚かにも。