意地悪な副社長との素直な恋の始め方
会いたくて、合いたくて


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身体を包む、ほどよいぬくもり。
規則正しく刻まれる、鼓動。
素肌に触れる自分のものではない、大きな手。

どれもすっかり馴染みのもので、わたしの穏やかな眠りを妨げない。

首筋を辿る熱く、柔らかい唇も……


(あ……!)


「ダメっ!」


身体を反転させると、ありったけの力で広い胸を押した。

無意識なのかもしれないが、朔哉はうなじにキスマークをつけるのが癖だ。

カメラテストとは、どんなことをするのかよくわからないが、メイクはされるだろうし、着替えることもあるだろう。
初対面のひとたちに、あからさまな情事の痕跡を見せびらかす趣味はない。

第一、面接にキスマークをつけて現れるモデルなんて、やる気を疑われる。

しかし、朔哉はもちろん引き下がらない。


「ダメじゃない」


わたしの腰を引き寄せて、今度は胸元へ顔を埋めようとする。


「ダメだってば!」


寝乱れた頭を押しやって、起き上がる。

朔哉も身体を起こし、苛立ちもあらわにわたしを問い詰めた。


「どうしてダメなんだ? いままで、何も言わなかっただろう? 誰かに……流星に見られるのがイヤなのか?」

「は……?」


なぜここで、流星の名が出るのか。
驚くわたしを見つめる朔哉の顔が、歪む。


「アイツとは、朝も一緒に出勤してるし、二人きりで食事にも行った」

(それって……嫉妬したってこと?)


あまりにもわかりやすい朔哉の発言に唖然としながらも、誤解を放置すると厄介なことになりそうだと思い、慌てて否定した。


「一緒に出勤したのは、たまたま月子さんと同じマンションに住んでるからで! 食事も、入社式のお手伝いのお礼ってだけで。別に、そういう対象じゃ……」

「流星に見られたくないわけじゃないとしたら、どうしてダメなんだ?」

「どうしてって……フツー、誰にだって見せたいとは思わないでしょ。恥ずかしいし」

「いままでは、恥ずかしくなかったのか?」

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