意地悪な副社長との素直な恋の始め方
「取り敢えず、そんなところかな」
「ありがとう、サヤちゃん」
貴重な情報をせっせとスマホに登録しながら、明日のデートでは何事もありませんようにと祈らずにはいられなかった。
いらない場面で引きが強いわたしだ。
何かが起きて、朔哉との関係が拗れてしまうのが怖い。
サヤちゃんは、「どういたしまして」と笑い、秘密を打ち明けるようにわたしの耳に囁いた。
「あのね、偲月ちゃん。これだけ話しておいて、いまさらなんだけど……副社長は、偲月ちゃんと一緒なら、どこにいても、何をしても楽しいと思うよ」
「え? どうして?」
昨日の朔哉と同じようなことを口にしたサヤちゃんは、苦笑いして答えを教えてくれた。
「だって、好きな人と一緒にいられるだけで、幸せじゃない?」
「……………」
「偲月ちゃんだって、彼と一緒にいるだけで嬉しくなるでしょ?」
「……うん」
「楽しいデートになるといいね? 明日は、ちゃんと定時で帰れるよう、わたしも協力するから!」
「ありがとう」
持つべきものは恋愛エキスパートの同僚だと、しみじみ感謝していたら、満面の笑みで見返りを要求された。
「ちなみに、来週の金曜日は流星さんたちと合コンだから、予定空けといてね? 偲月ちゃんは、参加必須だから!」
「……え?」