意地悪な副社長との素直な恋の始め方

*****



「……月ちゃん?」

「…………」

「偲月ちゃん!」

「えっ!」

「もう、終業時間だけど?」


怪訝な表情をしたサヤちゃんを見上げ、時計を見遣り、事実であることを確認する。


「……あ、うん」

「どうしたの? 今日は、大事なデートでしょ? 急がなくていいの?」

「う、うん」

「がんばって!」

「あ、りがとう……」


更衣室で着替え、メイクを直し、社屋を出たところで合コンへ行くというサヤちゃんと別れ、恐る恐る鞄からスマホを取り出した。


(着信……ゼロ。通知も……ない)

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