意地悪な副社長との素直な恋の始め方


「いらっしゃい、シヅキちゃん!」

「いらっしゃい!」


カワイイ挨拶に振り返れば、久しぶりに見る双子ちゃんだ。
姿が見えなかったのは、バスルームで手を洗っていたからだと自ら報告してくれる。


「こんばんは、ミミちゃん、ナナちゃんと……、はじめまして。明槻 偲月(あかつき しづき)です」


双子の後ろにいる女性とは、初対面だけれど、面差しが子どもたちと似ているので、誰なのかすぐにわかった。脚本家として活躍している双子のお母さんだろう。

流星の口ぶりから、凛とした美女を想像していたけれど、まったくちがう。
つぶらな瞳に小さめの唇。笑うとできるえくぼがチャーミング。身体つきも小柄で、おそらく身長は百五十センチ前半。小動物系のかわいさ。

しかも、気さくな人柄らしく、ニコニコしながら率直な褒め言葉をくれる。


「はじめまして、相沢 透子(あいざわ とうこ)です。ミミとナナが言ってましたけど……ほんとうに、美人さんですねぇ。顔小さくて、八頭身で、スタイルよくて、羨ましいぃ~! モデルされているのも、納得」

「あ、ありがとうございます……」

「ねーねー、シヅキちゃん! 花嫁さんになったの、見たよ!」


双子ちゃんは、わたしが透子さんと挨拶している間に、どこからかあの結婚情報誌を持って来て、「コレ! コレ!」と大興奮で指をさす。


「すっごいキレイ! お姫様みたいだよね?」

「うん、すっごくカワイイよね!」

「ナナも、こういうドレス着たい!」

「ミミも!」

「シヅキちゃんみたいな花嫁さんになりたい!」

「……ありがと」


素直すぎる言葉で褒めちぎられ、照れくさいやら恥ずかしいやらで、居たたまれない。


「ねえ、これ、ハジメくんなんでしょ?」

「う、うん」


わたしが流星にバックハグされている写真を指差され、事実だからと頷けば、そっくりな満面の笑みを二つ、向けられる。


「すっごい、ラブラブだね!」

「だね!」

(ら、ラブラブ……)


ではなくて、あくまで仕事なのだと言おうとしたら、予想外の質問に見舞われた。


「シヅキちゃんとハジメくんは、恋人同士なの?」

「えっ!? いや、それは、な」

「お、鋭いな?」


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