意地悪な副社長との素直な恋の始め方
声には出さないが、抗議の気持ちを込めてニヤニヤ笑う流星を睨みつける。
朔哉との破局が決定的になった日から一夜明けた海で、スマホを乗り換えるのと同時に、朔哉から彼へ乗り換えないかと言われた。
もちろん、そんな真似はできないとその場でお断りした。
けれど、わたしが『YU-KIホールディングス』を退職する前も、した後も、流星は何かにつけて食事に誘ってくれる。
ぎゅうぎゅうにスケジュールが詰まっているわたしの事情を知っているからか、食事以外のお誘いはないものの、会えば会ったで楽しいし、彼の思わせぶりな言葉や態度には、からかわれているだけだとわかっていても、ドキドキしてしまう。
彼を好きになれたら、恋人になったら、きっと大事にしてくれるんだろうな、と思う。
でも、そうは思っていても、何かが、最後の一歩――友人と恋人の境目を飛び越えるのを引き留める。