意地悪な副社長との素直な恋の始め方
そんなことを考えていたら、思いがけない許可が下りた。
「ミミとナナが大人になるまでの間なら、シヅキちゃんにハジメくんを貸してあげてもいーよ」
「ええと……」
(べつに貸してもらう必要はないんだけど。ここは、取り敢えずお礼を言うべき? いや、でも、付き合ってないし?)
「いいよね? ママ」
透子さんは、先ほどまでの豊かな表情が抜け落ち、どこか虚ろな目をしていた。
しかし、娘たちに同意を求められると、ハッとしたように笑みを浮かべて元義弟をこき下ろす。
「いいんじゃない? でも、ハジメに偲月さんは、もったいないと思うけどなぁ。偲月さんには、もっとイケメンで、経済力も包容力もある、大人な男性が似合う」
「もったいないって、何だよ? イケメンで、女性の扱いも上手くて、甲斐性もある。誰がどう見ても、俺は優良物件だろ!」
「真のイケメンは、自分をイケメンとは言わないのよね」
「言わないヤツほど、心の中で『この世で一番カッコイイのは、自分だ!』とか思ってんだよ」
「だとしても、ハジメのような『ソコソコ』イケメンとちがって、本物のイケメンなんだからいいの!」
「ソコソコって言うな!」
まるで夫婦漫才のように、ポンポンと言い合う二人の様子を見ていたシゲオが、ぽつりと呟いた。
「……なるほど」