意地悪な副社長との素直な恋の始め方
「おはようございまーす」
どんな仕事の打ち合わせか、ドキドキしながら事務所を訪れると、仁王立ちの花夜さんが待ち構えていた。
「おはよう、偲月。やっぱり……Tシャツとジーンズで来たわね……」
花夜さんの溜息に、血の気が引いた。
「あの、もしかして……打ち合わせって、外……ですか?」
「ええ、そうよ。でも、こんなこともあろうかと、準備万端。偲月が一番魅力的に見える服とメイクを用意したから、安心しなさい」
そう言う花夜さんが用意していてくれたのは、『avanzare』のブラックワンピース。
タイトなシルエットでも、ウエストをマークするベルトや絶妙なスカート丈で色気過多にはならない。
そして、そんなワンピースに相応しいメイクを施してくれるのは……。
「シゲオ! なんでここにいるの?」
クライアントに失礼のないよう身だしなみを整えるのはわかるが、どうしてシゲオがいるのか。
答えは、本人が明かしてくれた。
「わたしも、その打ち合わせに呼ばれてるからよ。で、アンタのことだから、普段着で現れる可能性があるとこちらの所長の耳に入れて、念のためスタンバってたわけ。あんまりにも予想通りの恰好で現れたんで、びっくりしたわ」
「ご、ゴメンナサイ……でも、昨日なんで教えてくれなかったのよ?」
「今日、月子さんを撮るのに差し支えたら困ると思ったのよ。アンタ、プレッシャーに弱いから」
「……おっしゃるとおりで」