意地悪な副社長との素直な恋の始め方
口説くのは、誰?
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サヤちゃんのノロケ話の合間に、わたしの近況を話し、抹茶、フランボワーズ、それからローズと三個のマカロンを平らげたところへ、サヤちゃんのスマホに会議終了を告げるお知らせが届いた。
「あ、どうやら、会議が終わったみたいです。会議室へいらしてほしいとのことなので、ご案内しますね!」
訪問の目的は、マカロンを食べるためではないとわかっていても、嬉しいお知らせではなかった。
(ああ、できれば行きたくない……会いたくない……会いたいような気もするけど、でも、会いたくない……)
相反する気持ちを行ったり来たりしながら、シゲオに手早く口紅やメイクを直してもらい、先を行くサヤちゃんに従ってエレベーターに乗り込む。
大小の会議室が並ぶ二つ下のフロアで降りる頃には、マカロンで癒され、上向いた気分は急降下していた。
廊下を奥へ奥へと進み、サヤちゃんがノックしたのは、社内で一番広い会議室の扉だ。
「失礼します。望月所長とモデルの明槻さん、ヘアメイク担当の牧田さんをお連れしました」
サヤちゃんが扉を開けた拍子に、ちょっとしたざわめきが漏れ聞こえた。
(え……会議、終わったんじゃないの……?)
恐る恐る扉を潜り、そこに居並ぶ人たちの顔ぶれを見て、足が竦んだ。
(な、んで、あらゆる部署の部課長が揃ってるの!?)
長テーブルを取り囲むようにしているのは、ブライダル部門をはじめとした主だった部門の部長や課長。知った顔もあればそうではない顔もある。
(ど、どうしよう……)
この場の状況を読めず、花夜さんもシゲオも何も言わないので、入り口付近で立ち止まったまま注目を浴びるに任せるしかなかった。
心臓はあり得ないくらいバクバクしている。
喘ぐように息をし、さまよわせた視線が、部屋の奥に座っている朔哉と芽依、流星の姿を捉えた。
広報課長の横にいる流星は、不服そうな表情で腕を組み。朔哉は、一部の隙もない完璧な微笑を浮かべている。芽依は、黒のスーツ、髪をきっちりアップにし、いかにも仕事のできるキャリアウーマンといった風情だ。
わたしをまっすぐ見据えるその顔にあるのは、儀礼的な笑み。
他人行儀な彼女の様子で、冷静さを取り戻した。
(ここへ来たのは仕事のため。個人的な感情やわだかまりは……関係ない)