意地悪な副社長との素直な恋の始め方
それは、どこかで聞いた話


*******


ホワイト、ブラック、ピンク、オレンジ、カーキ、ブラウン、レッド……その人に一番似合うメイクを施すために、さまざまな色を駆使するシゲオは「画家」だ。

キャンバスではなく、ひとの顔に色を載せてさまざまな絵を描く。
気が強そうだったり、ふんわり柔らかだったり。

たった一色、ほんのわずかなアクセント、微妙なバランスで、視覚に与える印象がガラリと変わる。

メイクの魔法を熟知しているシゲオは、ドレスの色やデザイン、髪色を考慮して、その女性がこれから演じる役にぴったりのメイクをあっという間に仕上げてしまう。


(プロって、凄い……)


内心、感嘆の溜息を漏らし、嬉しそうに笑った女性をすかさず切り撮る。


「……うん、これで終わりです。アイさん、ご協力ありがとうございました!」

「いーえ! こっちこそ、本物のモデルになった気分を味わえて楽しかったわ」

< 361 / 557 >

この作品をシェア

pagetop