意地悪な副社長との素直な恋の始め方
「ねえ、わたしって……そんなにわかりやすいかな?」
「は? わかりやすいなんてもんじゃないわよ。ダダ漏れ」
「だ、ダダ漏れって、何が!?」
焦って問い返すと、シゲオに「はぁ」と溜息を吐かれた。
「いろいろよ。だから、変に大人の女を演じようなんて思わないことね。ただでさえ、アンタは素直になれないんだし、ギクシャクしたデートなんて気まずいだけでしょ」
素直じゃないのは自覚している。
でも、今回の場合は、最初から気まずいのだ。
そこを何とか和ませるのが、大人の女、大人の対応というものでは……?
そう思ったけれど、「アンタには無理よ」と言われる。
「無理って、そんなことな……」
「やめておきなさい。一線超えた仲じゃ、よそよそしいとしか思われないわ。大人の対応は、朔哉が仕事柄百戦錬磨でしょうから、アンタは大人しく口説かれていればいいの! 下手に取り繕えば、かえって大惨事を招くわよ」
そこまで脅されては、意地を張ることもできず、敗北を認めるしかない。
「……ハイ、スミマセン」
「いつも言ってるでしょ? 偲月は、おバカなくせにアレコレ考えすぎなの。起きてもいないことを心配するのは時間の無駄。いくらシミュレーションしたって、現実はそう都合よく進まないものなんだから」
「ハイ」