意地悪な副社長との素直な恋の始め方
朔哉はちょっと言いにくそうな表情で、ぼそぼそと経緯を説明する。
「俺からだとわかると受け取ってもらえないだろうと思って、母さんから渡してくれるよう頼んだ」
「え」
(何だか似たような話を最近どこかで聞いたような……?)
朔哉らしくもない気弱な行動に戸惑いつつも、おざなりではなく、ちゃんとわたしのことを考えて選んでくれたのが嬉しい。
嬉しすぎて、黙っていられなかった。
「……ありがとう。すごく、嬉しい」
いつも、なかなか素直に言えない言葉がすんなり口をついて出たのは、やっぱり酔っているせいかもしれない。
でも、ほっとしたように笑う朔哉を見たら、もっとたくさん言えばよかったと思った。
(朔哉には、いろいろしてもらっているのに、いままできちんとお礼を言ったこと、ない……)
マカロンのことも、いま着ている『avanzare』の服を買ってもらった時も、そうだ。
タイミングが、とか、大げさに喜んだら、次を催促していると思われるんじゃないかとか、そんなつまらないことを気にせず、ちゃんと伝えればよかったのに。
そうしたら、もっと朔哉の嬉しそうな顔を見られたのだと思うと、いまさらでもいいから伝えたくなった。
「あの、マカロン……ありがとう。オリジナルのデザインまで頼んでくれて、しかも百個分も……。あと、これも! 『avanzare』の服も、ありがとう。朔哉が買ったものだから、勝手に持っていくのはどうかと思ってたから。わざわざ送ってくれて、すごく助かった。秋冬もののモデルをするのにも、参考になるし。中には、売り切れてるものとかもあるし……」
上手には伝えられなくても、嬉しいこと、感謝していることだけはわかって欲しくて、言葉を連ねていたら、朔哉が眉をひそめて呟いた。
「……送った? いつ?」
「え? いまのところに引っ越して間もなくだけど? いきなり段ボール箱が大量に届いて、びっくりしたナツから電話が……」
「…………」