意地悪な副社長との素直な恋の始め方


「ちょっと、偲月! 時々ってなにっ!? いつもイイコト言ってるでしょ!? 本でも出そうかと思うくらいよ!」

「そうだね」

「ぜんぜん心がこもってないわよ」

「そんなことない。シゲオのこと、尊敬してるし」

「アンタねぇ……サラリと恥ずかしいこと言ってんじゃないわよ!」


すかさず、頬を赤しているシゲオを一枚撮る。


「なに勝手に撮ってるのよ! 偲月!」

「カメラテスト。ねえ、今度、シゲオがメイクしてるところ撮らせてくれる?」

「それは別にかまわないけど……何する気よ?」

「コンテスト用の写真にする」

「は? この間、アイを撮ってたじゃないの」

「別々のテーマで撮ろうと思ってたけど……連作にしようと考え直した」

「いつ?」

「いま」

「いまって……」


唖然とするシゲオに、一応言い訳しておく。


「行き当たりばったりじゃないからね? インスピレーションも大事なの!」

「物は言いようね……」


もともと、投稿写真のコンセプトは、撮っていく中で決めようと思っていた。

最初から欲しい場面を決めて、それだけを切り撮る方法もあるけれど、思いつきや偶然の発見、出会いがインスピレーションを与えてくれることも多々あるからだ。

そしてたったいま、何を撮りたいかはっきりした。

完成されたものよりも、これから先を知りたくなるような、自分もメイクしたくなるような、そんな写真を撮りたい。

それには、シゲオの存在が不可欠。

メイクがテーマだから、メイクした人を撮らなくちゃならないなんて、決まりはない。
メイクするひと、メイクされるひと、そして……魔法の道具を撮ってみようと思った。


「ダメ?」

「べつに、協力するのはかまわないけど……世のイケメンが恋するような、ステキな姿に撮ってちょうだい」

「それは無理」

「何が無理なのよ」

「実物以上には、撮れないから」

「アンタねぇっ! その髪……ポニーテールにしてやるわよっ!?」

「え、ヤダっ!」


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