意地悪な副社長との素直な恋の始め方
朔哉は声を失い、信じられないと言った表情で彼女を見つめている。
「お兄ちゃんの部屋にあった、偲月ちゃんの服……送ってほしいと頼まれたのは、嘘なの。わたしが、勝手に送った。お兄ちゃんが、熱を出して待ち合わせに行けなくなった日、偲月ちゃんと連絡が着いたって言ったのも嘘なの。偲月ちゃんは、ずっと待っていて……それで、部屋まで来たのを追い返した」
大きな瞳に涙を溢れさせた芽依は、か細い声でこれまで吐いてきた嘘を告白した。
「誕生日の夜も……偲月ちゃんが誤解するように、わざと電話が繋がった状態でお兄ちゃんに告白して。酔ったフリをして、お兄ちゃんを実家に泊まらせて……」
「芽依、どうしてそんなことをしたんだ!」
「だって!」
この場に、自分たち以外の人間がいることにも構わず、芽依はありのままの気持ちを叫んだ。
「だって、好きなんだもの! でも、そんなこと言ったら、妹でさえいられなくなるから、ずっと我慢していた。でも、同じ妹でも偲月ちゃんとはキスもセックスもしてる。それが、耐えられなかったの! だって、わたしのこと、好きだったでしょ? それなのに、どうして? どうして、お兄ちゃんの横にいるのが、わたしじゃなくて偲月ちゃんなのっ!?」
「芽依、」
「ねえ、偲月ちゃんは、わたしの代わりだったんでしょ?」
「ちがう」
「ちがわない。偲月ちゃんがいなければ、お兄ちゃんはわたしを選んだでしょ? ねえ、そうでしょっ!?」
「…………」