意地悪な副社長との素直な恋の始め方
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わたしの命令に従った運転手は、バックミラーをちらちら気にしながらも、とりあえず発進。
病院の敷地を出ると、流星の告げた住所へと進路を取った。
「……さすが、元ギャル。こえぇな」
わざとらしく身震いする流星を横目で睨む。
「元ギャルで、元ヤンではない。系統がちがうの!」
「そうか? 偲月なら、どっちでもいけそうだけどな。しっかし、見事なキレっぷりだったな」
「……うるさい」
「大人気も色気も何もないぶちまけ方だったけど、すっきりしたんじゃねーの?」
認めるのは悔しいが、そのとおりだ。
「……した」
いつでも期間限定の人間関係、広く浅い関係だったから、波風を立てずにやり過ごすのが一番楽だった。
ちょっとした苛立ちや苦痛は呑み込んだ方が早かった。
我慢するのにも慣れていた。
でも、朔哉との関係に、そんな当たり障りのないやり方は通用しない。
溜まり溜まったものが限界を迎える前に、引っ越したり、疎遠になったりという、都合のいい展開は起きないのだから。
「まあ、見るからに保護欲をかき立てられるお嬢な妹と、口ごたえばかりするギャルの妹なら、そりゃあお嬢な妹を優先するのは当然だ。普通の男なら、そっちを選ぶよな」
「うるさいって」
「でも、あんな盛大な愛の告白をされちゃあ、やっぱギャルの妹を選ぶかもな」
「はぁっ!? 誰がいつ、愛の告白なんかしたのよっ!」