意地悪な副社長との素直な恋の始め方
あり得ないことを言い出す流星を振り返れば、ニヤニヤ笑っている。
「あれが愛の告白でなくて、何なんだよ?」
「文句言っただけでしょ」
「これ以上好きになりたくないってことは、いまもすっげー好きだってことだろ」
「……ちがう」
「ちゃんとわたしのことを見てって、言いたかったんだろ?」
「ちがうってば!」
「ちがわねーよ」
「勝手な解釈しないで!」
「じゃあ、なんで泣いてんだよ」
「泣いてない……」
「泣いてんだろ。目からボロボロこぼれ落ちてんのは、何なんだよ? 鼻水か?」
「だから、泣いてないって言ってるでしょっ!?」
「そこまで言い張るなら、第三者に訊いてみようぜ? あのさ、運転手さん。コイツ、泣いてますよね?」
「えっ! あ、ああ……はい……泣いて、ますね。ついでに言うと、鼻水も出てますね。あのぉ、よければティッシュ、どうぞ」
「…………」
運転手が差し出した贅沢××と書かれた箱ティッシュを受け取り、鼻をかむ。
「大丈夫だって」