意地悪な副社長との素直な恋の始め方
ポン、と頭に乗っかった流星の手を振り払う。
「何がよ」
「あそこまで言われて、何とも感じない男はいねーだろ」
「いるかもしれないじゃない」
「大丈夫だって」
「何を根拠にそんなこと言うのよ? 何をどう感じるかなんて、個人差があるでしょ? 好きになるツボだって、ひとそれぞれちがうんだから、大雑把にひとまとめにして、いい加減なこと言わないでよ!」
「おま、ギャルのくせに小難しいこと言うな?」
「元!」
「元でも現でも一緒だろ」
「一緒じゃない。いまじゃアイライナーの消費量は二分の一だし、見せパンも穿かないし」
「そこかよ。で、どうすんだよ? このまま、気まずいまま仕事すんのかよ?」
「別に、朔哉と絡んで仕事するわけじゃないし」
「そりゃそうだけどよ。今回のプロジェクト。アイツがおまえの相手役を俺にしたのは、ぜってー社内の人間なら職権濫用できるからだろ。俺が、アイツにどんな目に遭わされてもいいのかよ?」
「うん。ぜんぜん気にならない」
「即答かよ! ったく、なんで他人の痴話喧嘩のとばっちり食らわなきゃならねぇんだよ……、って。ん? アイツ、よっぽど焦ってんな……。もしもーし?」
誰かからの電話に出た流星は、気のない返事を繰り返している。
よっぽど、どうでもいい相手なのだろう。
車窓から眺める夜の街を歩く人の中、スーツ姿の男性に朔哉を思い出し、鎮まりかけていた怒りが再燃し……、
(朔哉なんて……エセイケメンのくせに。朔哉なんて……朔哉なんて……)
思わず叫んだ。
「朔哉なんて……大っキライ!」