意地悪な副社長との素直な恋の始め方
仲直りの方法は?
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「うん、今日の撮影は無事終了。みんな、お疲れさま!」
カットの声からほどなくして告げられた流星監督の言葉で、ようやくその場の緊張が完全に解けた。
過労とストレスで倒れた月子さんは、三日後に無事退院。自宅療養を経て今日から撮影に復帰。
遅れを取り戻すべく、朝からあの日手こずっていた病院でのシーンに取り掛かったが、その演技は神がかり的で、NGはもちろんゼロ。リテイクもなしで、正午を前に予定していたすべての撮影が終了した。
「さすがねぇ……」
わたしの横で撮影を見守っていたシゲオが、首を振りながら感嘆の溜息を吐く。
「うん」
「しかも、大女優なのにちっとも偉ぶらないし」
月子さんは、監督やスタッフに迷惑をかけてしまったとお詫びしているのだろう。
ひとりひとりに、手ずから持参したお菓子らしきものを配っている。
「原因が夕城社長なら、それをどうにかできるのも彼だけってことね。月子さんも、まんざらでもないみたいだし、復活愛もあり得るかもねぇ」
「それで月子さんと夕城社長、二人とも幸せになれるなら、いいことだと思うけど……」
あの日、月子さんが搬送された病院に駆け付けた夕城社長は、元夫の立場を濫用し、とにかく月子さんの世話を焼きまくった。
退院するまでは、付き添いと称して彼女の病室で寝泊まりし。自宅療養になったあとも、押しかけ女房ならぬ押しかけ亭主として彼女のマンションに寝泊まりし。
仕事に復帰する月子さんに、もう大丈夫だと言われて渋々自宅へ戻ったものの、今日も月子さんをマンションまで迎えに行き、現場に送り届けてから会社へ向かったらしい。
「昔は許せなかったことも、時間が経って振り返ったら、何であんなことで喧嘩したんだろう? とか思うものなのよね。本当に嫌いになって別れたわけじゃないなら、わだかまりが解けて、もう一度……ということも十分あり得るのよねぇ」